2012/07/18


★この数年,大学の先生や現場の先生方,教材を開発していただいたエンジニアの方達と進めてきたプロジェクトが論文として形になった。

日本産業技術教育学会の学会誌,第54巻2号に掲載された「消費電力量を可視化するロボット競技用消費電力計測教材の開発と評価」だ。この消費電力量リミッターは,このブログでも既に紹介してきたものだ。

原発事故,技術教育に今できること
消費電力のイメージ

たしか3年前に東大で開かれた日本教育工学会で,プログラム学習のためのロボットカーの電力量を制御するアイディアを学会発表を聞いたことに刺激を受けて,手動制御のロボコンに持ち込めないかと教材の仕様を私が提案したのが,全ての始まりだった。工学的な素養は全くない私だが,チームでプロジェクトを進めていくとここまで大きな成果が出るのかと思い,そのチームの一員となれたことを誇りに思う。

福島第一原発の事故を受けて,世の中が自然エネルギーを見直しはじめた今,でもその技術を評価する指標を多くの人達がもっていないことに気付く。1kWhっていわれたって,どの程度のものだかわからない。電力量を計測して,機械や作業の効率や損失を実感をもって体得させたい。できる限り様々な操作や試行錯誤を通して体得させたい。自分で書くことではないかもしれないが,消費電力量リミッターとその実践は,これからのエネルギー変換の授業に一つの新しい方向性を示している。

★もう一つ,写真の手前の冊子は,今日いまさきほど開隆堂から届いた技術・家庭学習指導書指導事例編(技術分野)だ。こちらには,立体グリグリとグリロボの実践をここに書かせていただいた。「私たちの生活を支えるコンピュータを用いた設計と生産 ~『立体グリグリ』と『グリロボ』によるCAD/CAM実習~ 」だ。
これまでも様々な原稿を書き,ネット上のフリーソフトとして公開してきた『立体グリグリ』だが,これを簡易CADと位置付け,『立体グリグリ』で作成したデータで加工を行う簡易CAMが『グリロボ』だ。こちらも,このBLOGでも既に紹介している。

グリロボで簡易CAD/CAM体験を実現
3次元ディジタル作品の設計・制作
立体グリグリV3.4リリース 作り手の立場から著作権を学ぶ

そして,『立体グリグリ』と『グリロボ』も何人もの大学の先生方と,多くの現場の先生方と生産現場のエンジニアの方を巻き込んだプロジェクトから生み出された教材だ。中学校現場にCAD/CAMを持ち込むという発想は国内ではあまり聞こえてこない。難しいと思われているのかもしれない。しかし,この実践を通して,多くの生徒達が私に教えてくれた。「現代社会では,自分達の生活を支える一番身近なものの多くが,CAD/CAMやCAMのような高度な技術によって支えられている。(開隆堂指導書指導事例編(技術分野)P161から引用)
この気付きは,私にとってはとても大きなものだった。難しいから扱わないではない,重要だから扱うのだ。現代を支える基幹技術を技術科の授業で扱わなくてどうするというのだ。

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