2011/10/08

Think different.

 マックの宣伝に使われていたキャッチコピーだ。だが,ただのコピーではない。Appleという会社,その会社を率いてきたスティーブ・ジョブズの思想がそこには込められている。

この国の人々は,人と同じ考えをする人を好む。最近,今を第二次世界大戦前と重ねて考える番組がNHKスペシャルなどでよく放映されているが,都市という都市を空襲され,原爆を2発も落とされ,どうにも立ちゆかなくなるまでこの国の戦争は続いた。戦後は驚異的な復興を果たし,工業国としての世界的な評価を確立できたのも,人と同じ考えをする人を好むことと無関係とは思えない。
今,この国は膨大な借金を抱え,多くの人々が自分の進むべき道をみつけられずにいる。みなが同じ考え方をすれば,一つの道が行き詰まった時に必ず破綻がやってくるのは当然なのかもしれない。このまま同じ考え方を続けたなら,いつか来た道を繰り返してしまうことになる。


私は,みなと同じ考えをすることが基本的に嫌いだ。なにかをする時には,必ず逆,あるいは違う方法を考えてみる。何かを指示された時には,その指示の背後に何があるのかをまず考える。会話をする時も相手の考えた内容を,さらに進めて考えてみる。あるいは,その逆の極端な例を考える。そんなことを毎日やっていることに,最近気づいた。
技術教育での典型は,ロボコンの授業だろう。誰かがやった定評のある方法を試すだけでは,本当の面白みを味わうことはできない。他の分野のアイディアをヒントに,誰もが考えもしなかった方法で機構を実現した時の充実感,それを他のチームが採用してくれた時のうれしさは,言葉には表しきれない。ジョブズは,これを世界規模で達成した人なのではないだろうか。

技術を発展させたり,人類の歴史を進めることができるのは,人と違う考え方が出来る人だ。

ジョブズはパソコンを発明した人といっていいだろう。専門家のものだったコンピュータを個人が使えるものとして製品化したのは彼だ。マウスオペレーションのOSも彼が実現したといっていい。そして,今,iPhoneやiPadはタッチスクリーンだ。既存の技術を時代にあわせ,最適な条件で組み合わせコンピュータに形を与えてきたのが彼の仕事だった。

ジョブズなきあと,誰がその後を担うのか,直接的には誰かなのかもしれないが,影響を受けた誰もが彼の精神を継承していると私は思う。

Think different.