2012/02/01

本田宗一郎とスティーブ・ジョブズ

 久しぶりに,録画してあったプロジェクトXを見た。CVCCと呼ばれる当時画期的な低公害エンジンを開発したことで,HONDAは世界ではじめてマスキー法(排ガス中のCO,HC,排出量を1/10以下にすることを求めた大気浄化法)をこのCVCCでクリアした。今までも何度か見ていたはずだったが,今までとは違った見方をしていたことに気づいた。


 最近このBLOGでは,スティーブ・ジョブズの話題を取り上げてきたし伝記も読破した。ジョブズが経営者でありながら開発の先頭に立ちたがったこと,本田宗一郎が経営そっちのけで社長でありながら二輪者の時代から四輪車の開発までその現場に立っていたことが重なる。彼らに共通するのは製品を作り上げる執念だ。HONDAという企業には本田宗一郎のDNAが生きている。社会のためのものづくりという理念が,CVCCを生みだし世の中を動かした。CVCCは本田宗一郎の下に集まったエンジニア達が本田宗一郎と対立してまでも推し進めたプロジェクトだ。
 本田宗一郎は「アメリカのビック3に対抗する千載一遇のチャンスだ」と社内で語ったが,若手から「自分達は会社のためではなく,社会のために役立つものをつくっている。」と反発されてしまう。彼はこの言葉で引退を決意した。
 Appleは成熟しきれていない企業なのかもしれない。ジョブズの早すぎた死は,この会社にジョブズの後を継ぐ人材が育まれるチャンスを十分に与えなかったかもしれない。Appleの数年後の製品がその答えを教えてくれるだろう。


 子どもの頃,HONDAの車がほしくてたまらなかった。トヨタや日産ではないHONDAでなければならなかった。その魅力は,技術の楽しさの魅力であったように思う。将来は本田宗一郎の下で車を開発したいなんて夢を見ていた。今私はiPad2に夢中だ。さすがにAppleで働けるとは思えないけれども,この端末に未来を感じる。
 私は,工学部受験に挫折し,偶然技術教育にかかわることになった。しかし,子ども達と技術を語り合う時間には何者にも代えがたいおもしろさがある。ものづくりを通して次世代とかかわること,技術という言葉で未来の社会を語り合うことが,未来のこの国のために役立つと今確信できる。