2011/05/14

本当の技術(technology)の姿

中学校技術科では来年度(2012年度)から,栽培やエネルギー,コンピュータ制御など選択的内容であった学習内容が全て必修となる。多くの技術科教師が今まさに題材開発,授業づくりの試行錯誤の真っ最中だ。
少ない授業時間数でこれまでにない多岐にわたる内容を教えなければならない現実は,今にして思うと,「何のための技術教育か」と考えようとする教師のゆとりを奪い,結果的に「何のために技術を学ぶのか」を考える時間を生徒から奪っていたように思える。

2011年3月11日,東日本大震災は起こってしまった。厳しい耐震基準で建てられたこの国の多くの建物はマグニチュード9.0,最大震度7の地震に耐えた。しかし,巨大な津波は,防潮堤を壊し,鉄筋コンクリートの建物を飲み込み,多くの人命を奪い,破壊の限りを尽くした。
CO2を出さず地球環境に優しいはずの原子力発電所は,想定外の津波で破壊され,炉心溶融を起こし,大量の放射性物質をまき散らした。家に戻れない人たちが何万人もいる。放射線量が高い地域では,校庭での活動が制限され,農作物や水産物の汚染も深刻だ。

地震が起きて数日,断水が続く中,テレビやネットでとんでもない量の信じられない情報を一気に知った時,これが「技術」の本当の姿なのだと理解した。過去の地震で鍛え上げられた耐震基準。現代土木技術を軽々とねじふせた津波。どんな自然災害でも絶対安全と過信されてきた原発。

技術科教師17年目にこんなことを考えることになるなんて思いもしなかった。
「 あ~これが本当の技術(technology)の姿なんだ・・・ 」

今私たちが使うことのできる技術(technology)は,10万年前の石器以来,自然と対峙する中で数限りない先人の犠牲の上に獲得されたものだ。なぜ,今まで考えもしなかったのだろう。つい2ヶ月前まで自然は技術で御せるものであるかのうような錯覚をしていた。自然は文明を幾度となく滅ぼし,そのたびに新しい文明を築いてきたのが人間の歴史だ。戦争と技術については,様々な関連が語られてきたように思うが,自然と技術の関わりについて深く考えていなかった。
技術の発達を,今一度自然,天災との関係の中で考えてみたい。これまで気づかなかった視点がまだまだありそうだ。

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